コンタクトレンズで視力回復?オルソケラトロジーとは
日本ではまだあまり馴染みがありませんが、オルソケラトロジーという特殊なコンタクトレンズでの視力矯正の方法があります。
アメリカで生まれたオルソケラトロジーには50年以上の歴史があり、手術が不要で安全な視力矯正方法として注目されています。
今回はそんなオルソケラトロジーについてご紹介します。
目次
オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジー(orthokeratology)は日本語にすると「角膜矯正療法」という意味になります。
通常のコンタクトレンズは角膜の上に度のついたレンズを装着することで視力を矯正しますが、オルソケラトロジーは特殊なハードコンタクトレンズを装着することで角膜の形に癖をつけ、光の屈折率を調節し、角膜に度があるような状態にすることで視力を矯正します。
レーシックのようにレーザーやメスで角膜を削る必要がないので、治療にリスクがほとんどありません。レーシックに不安がある方でも手軽に視力が矯正できると評判が高く、TVや雑誌などで注目を浴びている近視矯正療法なのです。
オルソケラトロジーの治療詳細
オルソケラトロジーでは、個人ごとに角膜形状や近視度数に合わせた特殊なハードコンタクトレンズを作成し、それを夜間寝ているときに装用することで近視を矯正し、日中は裸眼で生活できるようになります。
治療の流れ
眼科によって異なることもありますが、下記の通り治療を進めていきます。
1.適応検査
視力検査や角膜形状、ドライアイなどの詳細な検査を行い、オルソケラトロジーが適用可能か確認します。
2.テストレンズ装用
適応検査にて問題がない場合、テストレンズを装用して効果を体験します。適応検査とテストレンズ装用は初回の診察日に同時に行うことがほとんどです。
3.レンズの処方・注文
テストレンズ装用で問題ない場合、レンズメーカーに対して、オルソケラトロジー用の専用レンズを注文します。
4.レンズ受け取り・治療スタート
注文したレンズが眼科に届いたら、眼科まで受け取りに行きます。受け取り時に医師からレンズ装用の注意点やレンズの取り扱い方法を聞きます。
当日夜間から専用レンズを装用して治療開始です。
5.定期検査
翌日、1週間後、1カ月後、その後3カ月毎などに定期検査を行い、視力の改善度と眼とレンズの状態を確かめます。なお、定期検査の周期は眼科により異なります。
料金
治療費は15万円~20万円程度です。
他にも、定期的な検査時の検査料(3ヶ月毎に約1,000円~3,000円)やケア用品代(3ヶ月毎に約3,000~4,000円)が必要となります。
また、レンズの寿命が2~3年程度なので、買い替えの費用として2~3年毎に5万円~10万円程度がかかります。
なお、オルソケラトロジーは厚生労働省の認可が下りていないため、健康保険による割引はありません。保険診療対象外の治療(自由診療)となり、全額自費診療となります。
オルソケラトロジーの効果
オルソケラトロジーのコンタクトレンズでつける角膜の癖は、レンズを外したあとも一定時間維持できます。夜間に専用のハードコンタクトレンズを装着すれば、日中は裸眼で過ごすことができます。
治療の経過としては下記のようになるのが定例です。
- 初回:夜間の装着で翌日の昼過ぎまで効果が得られます。
- 一週間経過後:夜間の装用のみで終日裸眼でいられるようになります。
- 2~3ヶ月後:週に3~4回の装着で視力が維持出来るようになります。
日中の視力が安定するまでは1週間程度かかるのが通例です。治療開始後1週間程度で日中は裸眼で問題なく過ごせるようになります。
また、レーシックとは違い手術が必要なく、専用コンタクトレンズの使用をやめれば角膜の形は元に戻るため安全性が高いです。
オルソケラトロジーが向かない方
日中は裸眼で過ごすことができるため魅力的なオルソケラトロジーですが、治療に向かない方もいます。以下の項目に該当する場合は眼科で十分に相談した上でオルソケラトロジーを検討してください。
1.強度の近視・乱視の方
オルソケラトロジーは軽度から中程度の近視の方向けに開発されてきた治療法です。
「-4D」(視力0.1)程度の中等度の近視までが適応とされています。
近年では少しずつ強度の近視や乱視の方向けのレンズも開発されてきていますが、専用コンタクトレンズをオーダーメイドで作る必要があるため手間と費用がよりかかってしまうことに注意が必要です。
2.重度のドライアイ・アレルギーの方
重度のドライアイやアレルギーがある方はコンタクトレンズを装着すること自体が難しいため、オルソケラトロジーは向いてないです。
ただし、治療の可否はドライアイやアレルギーの程度によるため、一度眼科で検査を受けて適正を判断してもらうのが良いでしょう。
3.その他眼科的疾患のある方
角膜に傷や炎症がある方はまずその治療を行う必要があります。そのほかにも眼科的疾患のある方はオルソケラトロジーが受けられない場合があります。
普段、コンタクトレンズの使用方法を守っていない人は注意した方がよいでしょう。
オルソケラトロジーの副作用・注意点
オルソケラトロジーの副作用・注意点について説明します。
オルソケラトロジーの副作用
オルソケラトロジーによる副作用はほとんどありません。
通常のコンタクトレンズ装用時と同様にレンズの洗浄をきちんと行わなかった場合や不適切な取り扱いをした場合に角膜障害や感染症の病気を伴うことがあります。
また、ハードコンタクトレンズであるため、レンズを破損してしまう恐れがありますが、就寝時に装用するのみであり、そこまで心配するほどではないでしょう。
オルソケラトロジーの注意点
レーシックでよくある後遺症である、ハロ・グレアになることがあります。
夜間に光の周囲にもやがかかったようにみえる現象(ハロ)、光がぎらついて見える現象(グレア)です。継続すれば、脳が見え方を補正して気にならなくなることもあれば、日常生活に支障をきたすこともあります。
ただし、レーシックと違い、オルソケラトロジーであれば、装用を中止することでもとの状態に戻すことができます。その点はレーシックに比べて安心ですね。
オルソケラトロジーの良くある質問
オルソケラトロジーの良くある質問をまとめてみました。治療に不安がある方は良くお読みください。
運転免許証は眼鏡なしになる?
「眼鏡使用」の条件がつきます。免許の取得時や更新時にオルソケラトロジーであることを隠して眼鏡の条件を外そうとすると、道交法違反となりますのでご注意下さい。
警察庁交通局運転免許課からの通達により、オルソケラトロジーレンズの使用者は、運転免許取得、更新時の視力検査に裸眼で合格していても、運転免許証の『免許の条件等』には『眼鏡等』と記載されます。また、視力検査時には、検査担当者にオルソケラトロジーレンズを使用している旨を申告しなければなりません。
『眼鏡等』の記載をなくすためには、オルソケラトロジー治療を完全に中止した上で、裸眼で視力検査に合格する必要があります。オルソケラトロジー治療中でも、基準の視力が得られていない場合は、裸眼で運転すると免許の条件違反となります
オルソケラトロジーの治療費は医療費控除の対象?
レンズ装着までの検査料金・レンズ代・定期健診・病院までの交通費など全てが医療費控除の対象となります。国税庁のホームページでも医療費控除の対象であることが明記されています。
眼科医で治療を受けるために支払う次の費用は、医療費控除の対象となりますか?
・オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)の費用オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)とは、近視などの角膜の屈折異常を特殊なコンタクトレンズを装用することにより、屈折率を正常化させて視力の回復をさせるものです。
この治療も、眼の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものであり、それに係る費用は、医師の診療又は治療の対価と認められます。
医療費控除とは、自分や家族のために医療費を10万円以上支払った場合に、10万円を超える金額の所得控除を受けられる制度のことです。
(※所得が低い方は10万以下でも適用となることがあります)
オルソケラトロジーの料金は約15万円~20万円であるため、確定申告をすれば10万円を超えた分の2割~3割程度の税金が戻ってきます。
(例:治療費20万円であれば、確定申告後に2~3万円程度が自分の口座に振り込まれます)
何歳から出来る?
小学生から出来ます。眼科により異なりますが、7歳頃から治療可としている眼科が多いです。
小学生がオルソケラトロジーの治療を受けることで、近視の進行を抑制できるとの研究結果もあるぐらいですので、子どもの近視が不安な方は一度受けさせると良いかもしれません。
ただし、小学生だとレンズの洗浄忘れや夜間の付け忘れなど適切な装用が出来ないこともありますので、保護者がきちんと管理する必要があります。
Yahoo!知恵袋に体験談を書いている方がいましたので参考に紹介します。
現在2人のこどもがオルソケラトロジーを使用しております。
中2の娘は小4の時に(その時の視力が0.5~0.6)、小6の息子は小2の時に(その時の視力は0.1~0.3)受診しました。今の視力は二人とも、1.5~2.0です。うちは装着したその日から、取り外しや洗浄などの管理も全て自分でやってもらうようにしていましたので、あまり手は掛かりませんでしたよ。でも、今でも子供たちがうっかり寝そうになったら「レンズいれた?」と声は掛けるようにしています。
レーシックとの比較
同じく近視法であるレーシックとの比較表を掲載します。
レーシックはいわゆるレーシック難民と呼ばれる後遺症が残る不安があるのが難点ですが、治療に成功さえすれば、一生効果が得られるのが特徴です。一方、オルソケラトロジーは毎晩レンズを装用しなければならない手間がありますが、手術は行わないのでリスクはほとんどないのが特徴です。
どちらも近視に対して優れた治療法ですが、一長一短がありますので良く検討して下さい。
オルソケラトロジー | レーシック | |
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メリット |
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デメリット |
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費用 | 15万円~20万円 | 7万円~40万円 |
なお、最近はレーシックよりも安全性が高いICL・フェイキックIOLの方がおすすめです。
オルソケラトロジーが適用できない強度近視の方でも、ICL・フェイキックIOLは対応しています。
また、万が一不具合があった場合にはオルソケラトロジーと同じく元に戻すことが可能なのがレーシックとの違いです。
ICL・フェイキックIOLの詳細は下記の記事を参考にしてください。
まとめ
オルソケラトロジーはリスクが低く、簡単に近視が治療できる優れた治療法です。ただし、オルソケラトロジーの治療が出来る眼科は日本ではまだあまり多くありません。
眼科によっては、1週間程度事前にお試し治療が出来るところや途中で治療をやめたら返金してくれるところもあります。治療を検討する場合はまずはどこの眼科で取り扱っているかを調べ、相談や検査に訪れると良いでしょう。
また、当サイトでは、東京でオルソケラトロジー受けられる眼科を一覧化していますのでぜひ参考にしてください。